"不安"って何だっけ?[論考8]
不安を全く感じないことが健全な状態ではないことが分かったとしても、
「不安はどの程度感じるべきなのでしょうか?」
結論から言ってしまえば、不安という感情自体を直接コントロールすることはできませんから、「どの程度感じるべきか」に焦点を当てて統一見解を出すことはできません。
「どの程度感じるべきか?」について統一見解を提示することはできませんが、"現在あなたが感じている不安の度合い"と"その不安を導き出す原因となった考え方の確からしさ"を調べることによって[論考4]で述べた不安の最終目標を達成することが可能になるでしょう。
これだけでは少し難解で具体的にどうすれば良いのか分からないかもしれません。
そこで、今回は臨床の現場において用いられる認知(物事の考え方や受け止め方)と行動を直接的にコントロールすることで感情と身体を間接的にコントロールする認知行動療法(CBT)から認知の面に焦点を当ててお伝えしたいと思います。*1
CBTは1970年頃、うつ病治療のためにアメリカのアーロン・ベック医師を中心に体系化された治療法ですが、精神疾患の患者さんだけでなく、広く一般の方々に適応できる方法であると思います。
状況から感情が生じるのではなく、状況に対する「認知」が感情を生む。*2
あなたはこれまで不安の原因を
「自分の心が弱いから」
「誰々のせい」
「人がいる場面だから」
など自分の精神力や相手、環境のせいにしてきたかもしれません。
もちろんそれ自体が間違っているというわけではありません。
間違っているわけではありませんが、不安を導くことになっていた本質的原因はあなたの気づかないところで流れる状況に対する歪んだ認知、しかもそれはあなたにとって当たり前になりすぎて、しっかりと意識することなしには歪んでいることにさえ気づくことない歪んだ自働思考(自動的に流れる歪んだ脳内プログラム)と言えるのです。
不安という感情は人類共通の存在であるかもしれませんが、不安を感じる場面やその程度は人それぞれです。
つまり、認知行動療法を実践する際にあなたとあなたではない誰かを比較し、その不安を誘因する原因となる歪んだ認知を捕まえて、
「私はあの人に比べてこんなふうに考えているからだめ」
「これだけ不安を感じているからだめ」
などと決めつけるものではありません。
この決めつけという思い込みこそ認知行動療法でいうところの歪んだ認知であるという事実をまず理解して下さい。
歪んだ認知はあくまで習慣的に形成されたものであって、それ自体はあなたの人格ではありません。
つまり、歪んだ認知それ自体も、また不安を感じることも、それ自体にバツをつけるというものではないのです。
認知行動療法のより具体的な方法について興味がある方や不安感情を和らげたい方々にいくつかのオススメ本をご紹介させていただきたいと思います。ご参考までに。
1.『認知行動療法のすべてがわかる本』(清水栄司/健康ライブラリーイラスト版)
認知行動療法の全体像を把握したいならこの一冊と言えるでしょう。
実践の前提となる理論を理解する第一歩として非常に有効です。
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2.『人見知りが治るノート』(反田克彦/エルパカBOOKS)
今回の記事を書くにあたって特に参考にした書籍の一つです。認知行動療法を病気に対してではなく、広く一般の人向けに書いた理論構成であることに加えて、実践したい人向けの書物となっています。
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3.『いやな気分よ、さようなら』(デーヴィッド・D.バーンズ/星和書店)
値段ははりますが、値段以上の価値を約束してくれる一冊だと思います。(詳しくは口コミや評価をご覧いただければと思います。)じっくり読みたい方やしっかりと理解したい方におすすめです。
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4.『こころが晴れるノート』(大野裕/創元社)
日本の認知行動療法の権威と言えばこの人を忘れてはいけないでしょう。皇太子妃雅子様の主治医として有名ですが、非常にわかりやすい文体で説明してくれるため親しみやすいと思います。
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*1: 人見知りが治るノート(反田克彦/エルパカBOOKS)