"不安"って何だっけ?[論考9]
私たちは不安を感じた際「なぜ不安を感じているのか?」ということを考えることが多いでしょう。
感情というものに対して鈍感になっている私たち現代人にとって、この質問さえス
ルーしている場合が多いかもしれませんが、無意識的意識的にはこのような質問が繰
り広げられている場合が多いのではないでしょうか?
不安について私たちが自らにこのように問いかける時、
それは少なからず、原因と結果という因果論的立場に寄与しています。
その因果論的立場から体系的かつ適確に作られた代表的な一例として認知行動療法を[論考8]でご紹介しました。
実際、精神医学や西洋哲学の主流は因果論であるため、私たちにとっては因果論の方が馴染みがあると言えるでしょう。*1
しかし、私たちは因果論的立場しか持ち合わせていないのでしょうか?
言い換えるならば「なぜ不安を感じているのか?」という質問以外に実践的に使うことのできる方法はないのでしょうか?
原因は自らの内側から探し求めるというよりも、外界の原因を自らに当てはめるというようなパターンに陥りやすいということです。
そうではなく、自らの内側からその関連性を導くことはできないのでしょうか?
そこで私は、ミンデルという心理学者が提唱するプロセス志向心理学とアドラー心理学の観点から目的論という方法について大まかにご紹介したいと思います。*2
目的論とは今ある結果に
「何のために存在するのか?」
「何のためにもたらされたのか?」
という問いを投げかけることによって成り立つ立場と言えます。
つまり、不安という結果を生み出した原因や理由を探す因果論的立場と異なり
「目的があって不安という結果を感じている」という考え方に立って不安を眺めるこ
とになります。
目的論的立場による質問、例えば、
「自らを守るため」
「自らの精神状態を安定させるため」
「不安を感じることによって多少の焦りを感じさせ、仕事の能率を高めるため」
などによって、原因論では見えてこない内在的な不安の存在意義が見出せるのではないでしょうか。
<目的論に興味がある方にオススメの書籍>
1.アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (岸見一見/ベスト新書)
近年『嫌われる勇気』がアドラー心理学を基礎としてベストセラーとなってから人気のあるアドラーだが、部分的理解に留まる人が多いのではないだろうか?アドラーの人間関係論、目的論、劣等感について全体像を学びたい人におすすめ。
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2.『痛みと身体の心理学』(藤見幸雄/新潮選書)
今回の論考で度々参考にさせてもらった一冊。
新潮選書に選ばれたことが納得できる質・量ともに十分の一冊。
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