ココロって何だっけ?

精神医学・心理学Ψ・哲学Φをベースに様々な"ココロ"について考えていきます。

幸福とは幸福を探すことである--ジュール・ルナール

"不安"って何だっけ?[論考6]

痛みを感じないという状態

 ここからは不安を感じない状態を痛みを感じないという状態に重ね合わせて考察してみましょう。

 

あなたは痛みを感じない人がいるのをご存じでしょうか?

 

現代医学において原因が明らかではなく、これらの疾病を抱えた人たちは周りのサポートなしには生きていくことができないのです。*1

 

痛みを感じないが故に「何が痛みで何が痛みでないのか」を区別する判断材料がありません。私たちが不安という心の痛みを認識することができるのは、私たちが不安を感じない瞬間、この場合は喜びや満足感のような心が晴れやかになる気持ちを知っているためであることが理解できるでしょう。

 

『非常にまれに、生まれつき痛みを感じない人がいる。そのような痛みから解放された生活は幸せのようだが、実はそうではない。痛みを感じとることができない人は、長いあいだ同じ姿勢でいることに不快感を感じないので、そわそわ身動きしないために、関節への血液の供給が損なわれ、青年期になるまでに関節が劣化してしまう。痛みを感じられない人のほとんどは、30歳までに死ぬ。』*2

『痛みは生命の危機を告げるサインだ。我々は痛みを忌避するが、痛みを感じない人が若死にするという事実が逆説の真理となって胸に迫る。痛みと快楽は同一線上にある。極端に走れば死に向かうのも一緒だ。苦痛を解消するのに麻薬(麻酔)を使うことからも明らかだ。そして快楽に溺れる人は痛みに弱い。』*3

『生まれた時から痛みの感覚が欠如しているため、赤ちゃんの時から唇や舌を噛んで血だらけになったり、包丁などの危ない道具に恐れを抱かなかったり、2階から降りるときに「階段を歩くより飛び降りた方が早いんじゃないか?」と思ったりするそうです。』*4

 

私たちは痛みを伴うことによって長生きすることができるのであり、痛みを伴うからこそ痛みに対する耐性を身に付け、理性という力を利用して正しい選択と決断をすることができると言えるでしょう。

 

もちろんこれは心理的側面ではなく肉体的側面の具体例です。

また、現代医学は心身二元論をベースに研究・臨床が行われていることも事実でしょう。*5

 

しかし、一方で私たちは心身が全く別の個々のものであり、関係を持っていないとは考えないのではないでしょうか。

 

・痛みを感じないがゆえに早く亡くなってしまう人がいる。

・痛みを感じない状態は「何が快で何が不快であるのか」を判断する材料がないことと同義である。

 

という事実を知ることによって、不安という痛みを感じられる状態が私たちの生活上の危険からどれだけ多くのものを守ってくれているのか、そしてそもそも不安がなぜ存在するのかということの理由を一つ理解できたのではないでしょうか。

 

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